読売新聞 2002年(平成14年)7月1日(月曜日)
ブルガリアバラ祭り -桐原春子-
ブルガリア中央部のカザンラクという町で毎年、バラ祭りが盛大に催されます。今年は六月一日−二日に開催、という情報が入ってきました。香料用のロサ・ダマスケナという特別な品種のバラが一帯に咲き誇り、収穫に感謝するという世界に知られたお祭りです。この祭りにあこがれていた私は、執筆中のバラの本に盛り込みたいと思い、カメラを携え出発しました。

カザンラク一帯は、「バラの谷」と呼ばれ、バラ畑が果てしなく広がっています。ロサ・ダマスケナはオールドローズの一種で、花の直径は七−八センチ、鮮やかなピンク色で、香りは甘くて濃厚です。香料用のバラ栽培が主要産業のプルがリアで、圧倒的に多い品種です。
いよいよバラ祭りの日。畑は、民族衣装で着飾った人々が踊りながらバラ摘みを実演します。むせるほど香り高いバラを私も好きなだけ摘み取りました。

庭造りの参考になったのは、バラ畑の畝と畝の間にカモミールやラークスパー、アザミが自生していたことです。実はバラ園にハーブなどを植えることは、世界的な傾向なのです。タイムや、ネギの間のアリウム類は独特のにおいがあり、昆虫や病気よけになるからです。

ロサ・ダマスケナは、家庭では、花弁をお茶やジャムにして味わうと、楽しみが広がります。日本では、通信販売で買うことができ、今冬に植える苗の予約がまもなく始まります。

祭りに先立ち、この町にある、民俗博物館でバラの精油抽出の様子を見て、バラのお酒を味わいました。

各地の僧院や修道院では、石畳の良さを再認識しました。カザンラクへ向かう途中で訪ねたバチェコボ増員では、広々とした石畳の中に華やかな花壇があり、ナデシコ、アスター(エゾギク)など懐かしい花が植えられています。カザンラクの民俗博物館では紫色のカンパニュラを植えた石畳の花壇が、またユネスコの世界文化遺産にもなっているリラ修道院では大きなモミの木がある花壇が印象的でした。

このアイデアは小さいな庭にも応用できました。石畳にすると、やっかいな雑草が生えないため、体力的自信がない人にお勧めです。様々な敷石がホームセンターなどで売られています。

村から村へと移動する道路のわきや畑、山に花が咲き乱れていました。庭園でしか見たことがなかったスモークツリーやキングサリが自然に生えていたのには驚きました。コーンフラワーやヤロー、ビロウドモウズイカなどもありました。こうした花は日本の花屋でも売られています。一鉢ずつ丁寧に育てるのもいいですが、自然な花畑もすてきでした。

ワイルドフラワーやハーブのことなど、もっと奥深く知りたい国。花好きなら、一度は訪れたいものです。