“バラ”という花に対し、単なる植物以上のものを感じてしまうのは今も昔も変わりません。バラを愛し、バラに狂い、バラに溺れる。
バラに魅了された3人のエピソードは、ゴージャスで情熱に満ちています。
1.バラの麗人・クレオパトラ
絶世の美女クレオパトラがバラを愛し、効果的に使ったのは有名な話です。ローマの有力者アントニウスとの再会をロマンティックに演出するために、船の帆にたっぷりダマスク・ローズの香りを染み込ませて出迎えました。
また、バラの花びらを30cmもの厚さに敷き詰め、その香りに包まれながらアントニウスと美酒を楽しみ、愛をささやいたのです。エジプト王国の女王ならではの豪華な使い方ですね。
2.バラの母・ジョゼフィーヌ
野に咲く花でしかなかったバラ。そのバラを収集して栽培し、新たな可能性をみつけたのがナポレオンの第一妃ジョゼフィーヌです。離婚後はマルメゾン離宮に広大なバラ園を作り、世界中から250種ものバラを集めて栽培しましたが、これは彼女が眺めるためだけではありませんでした。
このバラ園において、植物画家ルドゥーテに収集したバラを描かせて記録し、後世の人々のためにバラの本を作らせました。また、A.デュポンによってバラの人工交配が世界で初めて成功したのも、この場所です。“バラの母”と呼ぶにふさわしい功績を、彼女は残したのです。
3.バラ狂・皇帝ネロ
ローマ帝国の中でも屈指の暴君とされる皇帝ネロ。彼はその栄華を誇示するかのように、信じられないような贅沢や無茶をしたと、歴史は伝えます。その中にはバラについての記述もあります。毎晩、ドムス・アウレア(黄金宮殿)で開かれる宴ではバラの香油、バラ水を満たしたお風呂、天井からバラを降らせる仕掛け、バラの香りをつけたワイン、デザートのバラ菓子、とまさにバラづくしのもてなしが用意されていました。一晩に使われたバラの金額は、今のお金に換算すると約15万ドル! この浪費ぶり、まさに暴君。 |